9月 「ヘブン」 イタリアの街トリノ。29歳の英語教師フィリッパ(ケイト・ブランシェット)は、 夫や生徒を死に誘った麻薬売人に復讐しようと高層ビルのオフィスに爆弾を仕掛けるが、 計画は失敗し、罪なき4人の市民を死なせてしまう。その事実を尋問中に知らされたフィリッパは、 罪悪感で失神。その時、彼女の手を優しく握ったのが、21歳の刑務官フィリッポ(ジョヴァンニ・リビージ)だった。 フィリッパに恋してしまった彼は、やがて彼女を逃がすことを考え始める。 フィリッパは麻薬売人を処刑したい気持ちから、フィリッポの立てた計画に乗る。 そして2人は刑務所を脱出。麻薬売人の処刑を遂げる。その後、トスカーナへと向かう2人。 彼と彼女は、偶然にも誕生日が同じであることや似た名前であることを知り、愛を深めていく。 だが逮捕されるのは時間の問題。やがて2人は、追ってきた警察のヘリコプターを奪い、 そのまま上昇して空に吸い込まれていくのだった。 「クローサー」 ロンドン。小説家志望のジャーナリスト、ダン(ジュード・ロウ)は、街の交差点で、ニューヨークから 単身で来ていたストリッパーのアリス(ナタリー・ポートマン)と出会う。2人はまもなく同棲を始める。 1年半後、アリスをモデルにした小説の出版を控えたダンは、撮影スタジオで出会ったフォトグラファーの アンナ(ジュリア・ロバーツ)に一目惚れ。半年後、ダンのチャット上の悪戯により、アンナと、 皮膚科専門の医師ラリー(クライヴ・オーウェン)が出会う。2人は互いに心を通わせ始めた。 4ヵ月後、アンナの写真展の会場で4人が出会う。アンナとラリーは結婚を目前に控えていたが、 この日を境にアンナはダンとの密会を重ねていくようになる。1年後、アンナとラリーは 結婚していたが、微妙なすれ違いが始まっていた。アリスも、ダンがアンナを愛していることに傷つき、 ダンの元から姿を消してしまう。3ヵ月後、再びストリッパーとして働いていたアリスと、ラリーが再会。 1カ月後、ラリーはアンナとの離婚届にサインする代わりに、最後にもう一度彼女を抱きたいと要求。 アンナはその条件を受け入れ、それを知ったダンは傷つく。アンナとダンの愛は終わった。1ヵ月後、 ダンはラリーの診療所を訪ねる。そこでダンは、アンナがラリーと正式な離婚手続きを踏んで いなかったことを知らされ、ショックを受ける。 そんなダンに、ラリーはアリスの居場所を教えるが、アリスもダンへの愛は消えており、 単身ニューヨークへ帰ってしまうのだった。 10月 「戦場のピアニスト」 1939年、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻。 ワルシャワのラジオ局でピアノを弾いていたウワディスワフ・シュピルマン (エイドリアン・ブロディ)とその一家は、ユダヤ人に対するゲットーへの移住命令により、 40年、住み慣れた我が家をあとにする。ナチスの虐殺行為がエスカレートする中、ウワディスワフは カフェのピアノ弾きとして日々を過ごす。 42年、シュピルマン一家は大勢のユダヤ人と共に収容所へ送られるが、ウワディスワフは 警察の友人の手で一人収容所行きを免れた。 43年、ウワディスワフはゲットー脱出を決行。 旧知のポーランド歌手ヤニナ(ルース・プラット)の手引きで隠れ家に移った彼は、 僅かな食料で食いつなぎひっそり暮らし続けた。だが隣人に存在がバレて脱出、 親友の妹ドロータ(エミリア・フォックス)と彼女の夫のもとを訪ね、新しい隠れ家に住む。 夏になる頃、ワルシャワ蜂起が始まり街は戦場となった。ある晩とうとう、ドイツ軍将校 (トーマス・クレッチマン)に見つかってしまったウワディスワフ。彼がピアニストてあることを告げると、 将校は彼にピアノを弾かせた。演奏に感動した将校は、ウワディスワフをかくまってやり、 その数週間後に終戦が訪れるのだった。 「暗黒街の2人」 ジーノ(A・ドロン)は三十歳。十年前に銀行強盗の首領として逮捕され、 十二年の刑を受けたが、保護司のジェルマン・カズヌーブ(J・ギャバン)の力添えによって 出所することが出来た。彼には美しい妻ソフィー(I・オッキーニ)が待っていた。 ジーノの新しい生活が始まった。妻は小さな花屋を経営しており、それは質素だが、 明るい、楽しい日々だった。ある日、ジーノの出所を知った昔の仲間がやってきた。 再び手を組んで大仕事をしようという。ジーノはきっぱりと断わった。犯罪歴を持つ者はパリを始め、 大都会、港町に住むことを許されない、いわゆる“所払い"というやつだ。ジーノと妻は やがてモー市に移住した。一方、ジェルマンもモンペリエに移住した。軽犯罪係への転勤と いうことだが、ていのいい左遷であった。それでも、ジーノとジェルマンの家族は、 週末にはピクニックに出かけた。突然、悲劇がジーノを襲った。楽しいピクニックの帰路、 暴走してくる二台の車を避けようとしたジーノのスポーツカーは横転して、大破したのだ。 この事故で最愛の妻ソフィーが死んだ。自暴自棄の日々が続いた。月日が流れ、ようやく傷が癒えると、 ジェルマンのすすめでモンペリエに移り、刑務所で身につけた印刷技術に助けられ、 印刷工場で働くことになった。そして、新しい恋人ルシー(M・ファーマー)がジーノの前に現われた。 同時に、ジーノの運命を変えるもう一人の人間が出現した。この地に赴任してきたゴワトロー警部 (M・ブーケ)だった。もう忘れかけていた十年前、銀行に押し入ったジーノを捕えたのがゴワトローだった。 以後、ゴワトローの執拗な監視の眼が、ジーノを追い廻し始めた。ある日、ジェルマンのところへ、 ルシーがとび込んできた。「ジーノが警察に留置されている」。容疑は何もなかったが、 ゴワトローは異常な程ジーノを憎んでいた。偶然、ガソリン・スタンドで昔の仲間と会ったことが、 ゴワトローの気に入らなかったのだ。しかし、ジーノは二度と昔の仲間と仕事する気はない。 ゴワトローは彼を信ぜず、二度と奴らに会わない宣誓書を書けという。無茶苦茶な要求だったが前科者は 常に弱い。釈放されてからも、ゴワトローの追求は続いた。そんなとき、昔の仲間が銀行を襲った。 もちろんジーノとは無関係だったが、ゴワトローはジーノが首領だと思いこんでいる。 重傷を負った一人を病室のベッドで尋問するが、ジーノの犯行を立証出来ないゴワトローは、 ついに彼の家にまで押しかけ、ルシーを脅迫する。これを蔭で盗み見ていたジーノの怒りが爆発した。 ゴワトローがルシーの身体に手をかけたときジーノはゴワトローに襲いかかり、首をしめ上げた。 ゴワトローは死に、ジーノは逮捕された。公判、過去に犯した行為が決定的に心証を悪くしている上、 被害者は刑事だ。検事のたくみな弁舌がより一層、極悪人としてのジーノを印象づけた。 ジーノの女性弁護士(M・リボフスカ)は、犯罪を誘う要素が、この国に存在することを強く指摘した。 処刑の際の十七世紀の遺物ギロチンが、いまだに使われているような古さを、あの劣悪な刑務所内の環境を。 しかし、裁判官も陪審員も彼女の弁論には無関心であった。既に結論は最初から出ていたのだ。 判決が出た。求刑どうり死刑だった。大統領への助命嘆願も拒否され、処刑の日がやってきた。 ギロチン前に引きだされたジーノが、最後に振り向いたときの眼が、ジェルマンの心に焼きついた。 「孤独なうそ」 ロンドンで働くジェームズ(トム・ウィルキンソン)と妻のアン(エミリー・ワトソン)は 郊外の別荘で暮らしている。 ある日、家政婦の夫が轢き逃げされ死亡する。 近所に住む名士の息子ビルの車に傷があり、ジェームズは彼を疑う。 ジェームズが彼を問い詰めるとあっさりと罪を認める。 そのことをアンに告げると、アンは実は彼と不倫関係にあり、運転していたのは自分だと告白する。 警察の捜査がビルに迫り、アンを守るためにジェームズはビルのアリバイを証言する。 アンは、ビルとは別れることを約束するが別れられず、結局家を出て行く。 自責の念に駆られたアンは家政婦に罪を告白するが、彼女はアンを許し、 警察は証拠を得られず、捜査は終了。アンはジェームズの元に戻る。 しばらくして、ジェームズは偶然ビルが末期癌であることを知る。 見舞いに行くとビルはアンには言うなと釘を刺す。 しかし、ジェームズはビルが癌であることをアンに告げてしまう。 アンはビルの看護をするために再び家を出ていく。 郊外の家を引き払い、ロンドンで一人暮らしをするジェームズをビルの父親が訪ねてくる。 彼はジェームズに謝罪し、アンが献身的にビルの看病をしていることを告げる。 ジェームズはアンに会いに行き、和解する。 ビルは癌で死に、葬儀の場で会ったジェームズとアンは語り合う。 二人が心を通わせ、復縁の可能性も匂わせたシーンで終了。   11月 「愛情物語」 ピアニストとして身をたてるべく、エディ・デューチン(タイロン・パワー)は 有名なセントラル・パーク・カジノのオーケストラの指揮者ライスマンを訪れた。 かつてデューチンがパークシャの避暑地で演奏している時、ライスマンから賞賛されたからだ。 しかしいくらライスマンでもすぐ就職させるわけにはいかなかった。当てがはずれてしょげかえったデューチンは、 ふとグランド・ピアノが目にとまり、淋しい気持ちでピアノを弾き出す 。ところがその調べを聞き入る1人の令嬢、大資産家の姪マージョリイ・オルリックス (キム・ノヴァク)が、事情を聞いて同情し、ライスマンに、オーケストラ演奏の合間に デューチンのピアノ演奏を入れてくれるように頼んだ。ライスマンは大切な客の彼女の申し入れを 2つ返事で承諾する。このようなことからデューチンは楽壇に出ることができるようになり、 2人の間も発展する。2人はやがて叔父夫婦の祝福を受けてめでたく結婚する。 しかもデューチンの楽壇での地位は益々重くなり、愛児ピーターが生まれる。 デューチンの喜びは大きかった。クリスマスの夜、演奏が終えてマージョリイが入院している 病院にかけつけたデューチンは彼女が重態であることを知る。彼女はデューチンが来て 間もなく息をひきとる。マージョリー亡き後の彼の落胆は悲惨だった。 彼は叔父夫婦にピーターをあずけ、バンドを率いて演奏旅行に出かける。その間に第二次大戦が勃発し、 デューチンは海軍に入り、亡妻を一時でもはやく忘れようと軍の演奏関係の仕事を一切断って、 軍務に精励する。やがて終戦となり、ニューヨークに帰り、叔父夫婦の家を訪ねる。ピーターは既に 10歳になっていた。ところが長い間、面倒を見なかっただけにピーターは彼になついてこない。 その反対に英国の戦災孤児の美しい娘チキタ(ヴィクトリア・ショウ)に非常になついていた。 しかし間もなく、父子の愛情は音楽を通じて温かいものが流れるようになる。 デューチンは昔日の人気をとり戻したが、それと同時にチキタに対して愛情を抱きはじめる。 ところがある日、デューチンはピアノの演奏中左手がしびれる。医者の診断を受けたところ 白血病で余命いくばくもないと宣告をうける。デューチンはチキタとの結婚に悩んだが、 しかし、チキタは結婚を承諾する。デューチンとピーターに対する深い彼女の愛情がそうさせたのだった。 チキタとの結婚生活によってデューチンは幸福をとり戻す。が死期は刻々と迫って来る。 彼はピーターにそのことを打ち明ける。2人はグランド・ピアノの前に坐り、ピアノを合奏する。 そして死期のいよいよ近づいたことを知るデューチンは愛情と死の予想の苦しみに堪えかねて自らの命を断った。 「気分を出してもう1度」 主演はブリジット・バルドー。  新婚夫婦が喧嘩して、休日を別々に過ごす。自棄(やけ)になって1人でバーへ飲みに 行く夫に浮気心。相手の女の部屋へ行き、抱き合ってキスしている姿を隠し撮りされてしまい、 後日、彼女から強請(ゆす)られる。その女が殺害され、夫に容疑が。妻は夫の無実を信じて、真相を探る。 『気分を出してもう一度』は、そそられるタイトル。主演のブリジット・バルドーは、小悪魔的な美女。 マンボを踊るシーンが可愛くてセクシーでチャーミング。  けれど、この映画のバルドーの演技は、キュートで喜劇っぽい感じを出そうとする意図が 伝わってくるが、やや不自然でイマイチだった。夫役の俳優が素敵なルックスと雰囲気で、 サスペンス向きだと思った。出演シーンが少なかったのが残念。 「ショコラ」 フランスの小さな村。レノ伯爵(アルフレッド・モリーナ)の猛威で因習に凝り固まったこの村に、 ある日、不思議な女ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と娘アヌーク(ヴィクトワール・ティヴィソル)が 越してきてチョコレート店を開く。次々と村の掟を吹き飛ばす二人の美しい新参者に、訝しげな視線を注ぐ人々。 しかし、チョコレートのおいしさに魅了された村人たちは、心を開き、それまで秘めていた情熱を目覚めさせていく。 そして、夫の暴力を恐れ店に逃げ込んだジョゼフィーヌ(レナ・オリン)がヴィアンヌ母娘の生活に加わってまもなく、 河辺にジプシーの一団が停泊する。ヴィアンヌは、そのリーダーであるルー(ジョニー・デップ)と いう美しい男性に心を奪われ、彼を店に招き入れる。だがよそ者であるジプシーたちを 快く思わない村人たちの、ヴィアンヌに対する風当たりは強くなった。 やがて老女アルマンド(ジュディ・デンチ)の誕生日パーティー中、ルーの船は放火され、 ジプシーの一行は村を出ていく。そして疲れて眠ったまま息を引き取ったアルマンドの葬式が続く中、 ヴィアンヌは荷造りをして、次の土地に移るべく、嫌がる娘を引っ張って出ていこうとするのだった   「善き人のソナタ」 1984年11月の東ベルリン、DDR(東ドイツ国家)は国民の統制と監視のシステムを強化しようとしていた。 劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)の舞台初日。 上演後のパーティーで国家保安省(シュタージ)のヘムプフ大臣(トーマス・ティーメ)は、 主演女優でドライマンの恋人でもある魅力的なクリスタ(マルティナ・ゲデック)から目が離せなくなる。 党に忠実なヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)はドライマンとクリスタの監視および反体制的 であることの証拠をつかむよう命じられる。早速ヴィースラーは彼らのアパートに向かい、 屋根裏に監視室を作り盗聴を始め、詳細に記した日々の報告書を書き続けた。 既にクリスタと関係を持っていたヘムプフ大臣は「君のためだ」と脅し関係を続けるよう迫っていた。 その一方で、ヴィースラーは毎日の監視を終えて自分の生活に戻る度に混乱していく自分を感じていた。 そんな中、ドライマンは、DDRが公表しない、東ドイツの高い自殺率のことを西ドイツのメディアに 報道させようと雑誌の記者に連絡を取った。監視されていないと確信したドライマンは雑誌の記者を家に呼ぶ。 匿名の記事が雑誌に載ると、緊張が走った。DORはドライマンのアパートを家宅捜査するが、 何も見つけることはできなかった。クリスタに約束を破られた大臣は、薬物の不正購入を理由に彼女を逮捕させ、 刑務所へ連行する。そこではヴィースラーが担当官として尋問にあたることになった。 複雑な再会に戸惑いながらも、記事はドライマンによるものであると認めなければ二度と舞台に 立つことはできないだろう、と脅す。 クリスタは尋問に屈し、証拠となるタイプライターの隠し場所を教えてしまう。 そして捜査官は、今度は確信を持ってドライマンのアパートに踏み込み、ドアの敷居を持ち上げさせるが……。 「フォエバーヤング」 1939年、アメリカ空軍のテスト・パイロット、ダニエル(メル・ギブソン)は、 ある雨の日、恋人のヘレン(イザベル・グラッサー)にプロポーズしようとするが、 うまく言葉にできない。仕事へ戻ろうとしたヘレンは、交通事故に遭い、死の重傷を負い、 昏睡状態に陥ってしまう。6ヶ月が過ぎ、ダニエルは親友の科学者ハリー(ジョージ・ウェント)が 開発した人間冷凍装置の実験台に志願した。もしヘレンが目覚めたら起こしてくれと言って…。 時は流れ1992年、2人の少年ナット(イライジャ・ウッド)とフィーリックス(ロバート・ハイ・ゴーマン)は 、偶然紛れ込んだ空軍の倉庫で、埃をかぶったカプセルを発見し、固く凍った男の身体が 横たわっているのを見た。それは50数年前と変わらぬダニエルの姿だった。目覚めたダニエルは、 ナットの母クレア・クーパー(ジェイミー・リー・カーティス)を暴漢から救い、クーパー家に迎え入れられる。 一方、軍とFBIはダニエルを追っていた。やっとハリーの消息を知り、彼の居所を訪ね、 暴発事故でハリーが死んでしまったために、自分が置き去りにされたこと、 ヘレンが生きていることを知ったダニエルは、急速な勢いで老化する体で、 かつて自分が操縦したB-25でヘレンのもとへ飛び立った。岬の灯台に住むヘレンのもとへ 降り立ったダニエルは、老人の姿になっていた。ダニエルは、ヘレンにやっと愛を告白することができたのだった。 「ホワイトワンダーオランダ」 15歳の少女アストリッドは母イングリッドと2人だけで暮らしていた。 父を知らないアストリッドにとって美しいが気が強く独善的な女性イングリッドが 世界のすべてだった。そんなある日、イングリッドが恋人を殺害し終身刑で収監されてしまう。 保護者を失ったアストリッドは福祉事務所の管理下に置かれ、里親探しが始まる。 そして、元ストリッパーでいまは敬虔なキリスト教信者となったスターのもとに送られる。 アストリッドは戸惑いながらも新しい生活に慣れていくが、面会にやって来た彼女の変化に 気づいたイングリッドはそのことを厳しく非難するのだった…。 12月 「カサブランカ」 まだ独軍に占領されない仏領モロッコの都カサブランカは、暴虐なナチスの手を脱れて、 リスボンを経由し、アメリカへ行くために、1度は通過しなければならぬ寄港地である。 この町にアメリカ人リークが経営しているナイト・クラブは、それら亡命者たちの溜り場だった。 独軍の将校シュトラッサアは、ドイツ側の飛脚を殺して旅券を奪った犯人を追って到着する。 旅券を盗んだウガルテという男は、リークに旅券の保管を頼む。リークはこれをピアノの中へ隠す。 リークと奇妙な友情関係にあるフランス側の警察署長ルノオは、シュトラッサの命をうけてウガルテを 逮捕した。そのあとへ、反ナチ運動の首領ヴィクトル・ラスロと妻のイルザ・ラントが現れる。 2人はウガルテの旅券を当てにしているのだが、イルザは、この店の経営者がリークであると知って驚く。 憂うつなリークは、店を閉めたあと、盃を傾けながら、彼女とのことを回想する。 独軍侵入直前のパリで、彼はイルザと熱烈な恋に身を焦していた。が、いよいよ独軍が侵入して 来たとき、2人は一緒に脱れることを約束した。が、彼女は、約束の時間に姿を現さず、 そのまま消息を断ってしまったのだった。こうした回想にふけっているとき、イルザが一人で訪れて来た。 が、彼は素気ない言葉で彼女を立ち去らせる。ラズロは闇商人フェラリの口から問題の旅券は リークが持っているらしいと聞き、彼を訪れて懇請するが、リークは承諾しない。 2人の会見の模様を夫からきかされたイルザは、再びリークを訪れ、パリで彼と恋に陥ちたのは、 夫ラズロが独軍に捕われ殺されたと信じ切っていたためであり、約束を破って姿を消したのは 出発の直前、夫が無事であることが判明し、しかも病気で彼女の看護を求めていると知ったためである。 と事情を語った。これでリークの心もとけ、2人の愛情は甦った。翌日、リークは署長ルノオを訪れ、 ラズロに旅券を渡すからそのとき彼を捕えろ、俺はイルザと逃げる、と語り、手はずを整えさせた。 が、その夜、店へラズロとイルザが現れ、ルノオがこれを逮捕しようとしたとき、突然リークはルノオに 拳銃をつきつけ、ラズロ夫妻の旅客機を手配するため、飛行場へ電話をかけるように命じた。 ルノオは、電話をシュトラッサアへつなぎ、暗に2人が出発しようとしていることを知らせた。 飛行場へ赴いたリイクはラズロとイルザをリスボン行の旅客機に乗せてやる。一足違いで 駆けつけたシュトラッサアは、これを阻止しようとして却ってリークに射殺された。 彼の死によって独軍及びヴイシイ政府の呪縛から逸したルノオは、リックと相携へてこのカサブランカを 脱出し、反独戦線に加わることを誓うのだった。   「追想」 1928年。パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とするチェルノフ(エイキム・タミロフ)ら 4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき独り逃れたという大公女アナスタシアが生存していると宣伝、 彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。そして4人は、セーヌ河に身を投げようと したアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、 大公女のために英国銀行に預金した1000万ポンド、利子も含めて3600万ドルの金を引き出そうと企む。 アンナは、前に病院に入っていたとき自分はアナスタシアと打ち明けたことがあり、 自分の過去を殆ど記憶していないという謎の女だった。ボーニンらの巧みな演出で、 アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされた。 しかし要人の1人は彼女の真実性を認めず、狼狽したボーニンは最後の切札として彼女を、 デンマークで甥のポール公と余生を送るアナスタシアの祖母・大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と対面させようとする。 ポール公は革命前、アナスタシアと許婚であった。だがボーニンの試みは失敗、 そこで彼は大皇妃の侍女を買収して劇場でポール公とアンナの対面を計った。 これは成功し、ポール公も信じはしなかったがアンナの美しさに打たれた。 ところが翌晩、ポール公に再び会ったアンナは、自分を偽物のアナスタシアでなく 唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのは アナスタシアの金だけだと明けすけに話した。経済力の足りぬポール公は、この話に乗り、 大皇妃とアンナの対面に手を貸す。大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、 ドギマギして帰ろうとするが、大皇妃はアンナが時々する妙な咳に気づき、彼女が本物の アナスタシアと知った。かくてアンナはアナスタシア大公女として認められ、数週間後には、 彼女の金目当てのポール公と婚約披露をすることになった。 だが、この時になって、アンナとボーニンは互いに愛し合っていることを知った。 しかしすべてを諦めたボーニンは想いを秘めて大皇妃に暇乞いに行った。 ところが大皇妃は、ボーニンの心中を鋭いカンで悟り、2人を結ぶ労をとる。 アナスタシア大公女婚約披露の席に2人の姿はなく、「芝居は終わった」と いう大皇妃の声だけが静かに響いていた。 「ゴースト」 銀行員のサム・ウィート(パトリック・スウェイジ)は恋人のモリー・ジャンセン (デミ・ムーア)と一緒に幸福な共同生活を始める。 しかしモリーがサムにプロポーズした晩、2人を暴漢が襲い、モリーを 守ろうとしたサムは撃ち殺されてしまう。 地上を離れたサムの魂は天国へ行くことを拒否し、モリーをいつまでも見守ること を選ぶが、彼女に声をかけることさえできないのだった。 ある日、サムは自分を殺した男を目撃し、その男がウィリー・ロペス(リック・アビルス)と いう名であることを知るが、それを伝える術もなく途方に暮れている所に、 霊媒師オダ・メイ・ブラウン(ウーピー・ゴールドバーグ)に出会う。 オダ・メイは詐欺まがいの行為で客の金を巻き上げるような女だったが、 サムの言葉に反応した。そこでサムは彼女を説得し、モリーとの伝令役を引き受けてもらう。 最初半信半疑だったモリーだが、オダ・メイがサムしか知らないはずのことを語るので信用し、 そのことをサムの親友のカール・ブルーナー(トニー・ゴールドウィン)に相談した。 ウィリーの家に向かうカールの後をつけたサムはそこで、カールが、不当な金を銀行を経由させる ことで正当な金に見せかけるマネー・ロンダリングに関わっている事をサムに気づかれたと思い、 ウィリーと共謀して自分を殺したことを知る。そしてサムがオダ・メイの手によってカールの 秘密口座を解約したことで、サムが生きているのではないかと疑い始めたカールはウィリーと共に、 モリーに襲いかかるが、サムとオダ・メイの助けによって救われ、カールはガラス窓に突っ込み死ぬ。 モリーを助けるという使命も終わり、サムはモリーに愛を告げ天国に昇っていった。 「怒りのぶどう」 オクラホマ国道を刑務所給与と判る身なりの男が歩いてくる。 トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)だ。彼は運転手に頼んでトラックに便乗させてもらう。 運転手は遠回しにトムの素性を探る。「俺は刑務所にいたんだ、人殺しでな」トムは 捨てぜりふを残しトラックを降りた。家の近くでケーシー(ジョン・キャラダイン)に逢った。 彼は元説教師だった。人は砂塵の中をジョード家へつく。が、空き家になっていた。 奥をのぞくとミューリイがいた。トムはジョード一家がジョン伯父の家へ移ったと知る。 ジョード家は先祖代々からこの土地に住んでいたが、猛烈な砂嵐のため畑の収穫がなく土地会社に奪われたのだ。 ジョン伯父家でトムは4年ぶりに母(ジェーン・ダーウェル)と抱擁した。 翌朝ジョード一家は中古トラックに家財道具を積みカリフォルニアへ出発した。 ケーシーも一緒だった。トラックは炎天下の国道66号線を西へ西へと走り続けた。 チェコタ、オクラホマシティ、ベタニーを過ぎた。ある夕、祖父は、永遠の眠りについた。 葬式の費用がないので身内の者が埋葬した。カリフォルニアへ入り祖母も死んだ。 フーヴァヴィル移民キャンプについた。翌日、賃金のピンハネをする労働ブローカーと 労働者の争いが起こった。トムとケーシーは労働者を逃がした。ケーシーは1人で罪を かぶり保安官に連行された。ジョード一家は農場のす桃もぎをして働いた。 住まいも与えられた。トムはケーシーに逢った。ケーシーは保安官たちにストライキの首謀者 と思われていた。川で乱闘が始まりケーシーは殺された。トムはケーシーを殺した男を殺し、 自分も顔に傷を負った。保安官らは顔に傷のある男を捜している。ジョード一家はトムをかくし 農園から逃げた。トラックは走り続け国営の農務省キャンプに入った。 キャンプ代は週1ドル、母は生活の設備がととのい清潔であることを喜ぶ。 だが付近の農場のボスは国営農場の賃金がよいので快く思わない。 自分たちの労務者を安く使えないからだ。ある夜、ボスたちは暴力団を使ってキャンプを 焼き払おうと計画する。しかし、トムはキャンプ自治会の人々に協力してこの計画を未然に防いだ。 トムは仮釈放で州外へ出たので一同に迷惑をかけるのを恐れ1人立ち去る。 母はトムを暗闇の中に見送った。翌朝ジョード一家は綿つみの仕事に出発する。 父、母、アル、ジョン伯父、2人の子供とロザシャーン。ジョード一家もこれだけになってしまった。 夫コニーに置き去りにされて以来ロザシャーンは抜け殻のようになってしまった。 そして死産--若いからまた子供を産めるよと母は慰める。ジョード一家のトラックはアルが運転、 路傍の立て札は<雇人不要仕事なし>。 トラックは快速に走り続ける。 「オペラ座の怪人」 パリ、1919年。ドラマは過去へとタイムスリップを始める。 かつては豪華絢爛だったパリ・オペラ座。その栄華を偲ぶ品々が、廃墟となった劇場で オークションにかけられていた。そこには、老紳士ラウル・シャニュイ子爵 (パトリック・ウィルソン)と年老いたバレエ教師、マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)の姿があった。 やがて、謎の惨劇に関わったとされるシャンデリアが紹介され、ベールが取り払われると、 ふたりは悲劇の幕開けとなった1870年代当時へと一気に引き戻される。 パリ、1870年代。オペラ座では奇怪な事件が続いていた。 オペラ『ハンニバル』のリハーサル中、プリマドンナのカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)の 頭上に背景幕が落下した。腹を立てたカルロッタは役を降板。代役を務めたのは、 バレエダンサーのクリスティーヌ(エミー・ロッサム)だった。 喝采を浴びた彼女は、幼馴染みのラウルと再会。だが、その喜びも束の間、 仮面をかぶった謎の怪人・ファントム(ジェラルド・バトラー)にオペラ座の 地下深くへと連れ去られてしまう。地下の迷宮。そこには怪人の憎しみと哀しみがあった。 クリスティーヌは、ファントムを亡き父親が授けてくれた‘音楽の天使’だと信じてきたが、 地下の隠れ家で仮面をはぎ、その正体を知ってしまう。同時に彼の孤独な心と自分に対する 憧れにも気づくのだった。その頃、オペラ座の支配人たちは、オペラ『イル・ムート』の 主役にクリスティーヌを据えよというファントムからの脅迫状を受け取っていた。 その要求を無視してカルロッタを主役に立てた舞台は大混乱。ついに殺人事件が起きてしまう。 オペラ座の屋上。ふたりは永遠の愛を誓う。恐怖にかられたクリスティーヌは、 ラウルにファントムの正体を打ち明ける。クリスティーヌを優しく抱くラウル。 愛を確かめ合うふたりを、ファントムは怒りと哀しみの目で見つめていた。 大晦日、仮面舞踏会で婚約の喜びに浸るクリスティーヌとラウルの前に、 ファントムは自作の新作オペラ『勝利のドン・ファン』を持って現れる。 ファントムを追って迷宮に迷い込むラウル。それを助けたマダム・ジリーは ファントムの暗い過去を語るのだった。『勝利のドン・ファン』初日。 惨劇はその日に起きた。‘音楽の天使’への思慕にかられたクリスティーヌは、 亡き父の墓地に出向く。心配して後を追ってきたラウルは潜んでいたファントムと決闘になるが、 ファントムにとどめを刺そうとするラウルをとめたのは、クリスティーヌだった。 『勝利のドン・ファン』の初日、厳重な警戒態勢の中、ファントムは大胆にも主役になりかわり、 クリスティーヌとデュエットする。舞台で仮面をはぎ取るクリスティーヌ。怒ったファントムは シャンデリアを客席へ突き落として、クリスティーヌを再びさらう。消えたふたりを探すラウルは、 やっとの思いで地下の隠れ家にたどり着くのだが……。